山梨県甲府市の医療法人恭栄会 今井循環器呼吸器科 【内科・循環器科・呼吸器科・小児科】

睡眠時無呼吸症候群

■ 睡眠時無呼吸症候群とは?

 睡眠中に呼吸(口や鼻の空気の流れ)が10秒以上停止する状態を睡眠時無呼吸と言います。多くの場合、睡眠時無呼吸には”いびき”を伴います。1時間あたり5回以上、もしくは7時間の睡眠中に30回以上、無呼吸や低呼吸が起こり、そのために熟眠ができず、日中起きている時間帯に強い眠気を催す状態のことを睡眠時無呼吸症候群と呼んでいます。脳、神経、心臓などの病気が原因で起こる無呼吸を中枢型、のどが閉じてしまうことで起こる無呼吸を閉塞型、両者が混合して起こる無呼吸を混合型と区別しています。タイプとしては閉塞型が最も多く、肥満・首が短くて太いなど、体型が大きく影響します。但し、顎が小さい・扁桃腺が大きい・のど仏の開口部が狭いなど、肥満がなくても閉塞型無呼吸が起こる場合があります。

■ 睡眠時無呼吸症候群の症状は?

 自覚症状として最も多いのが、「日中の眠気」です。その他、「夜に熟睡できない」「夜に何度も目が覚める(トイレに行く)」「寝汗をかく」「すっきりと起きられない」「朝起きた時に頭痛やだるさを感じる」などがあります。また、周囲の人からは、「いびきがうるさい!」と言われることが多いです。

■ 何が問題?

 たかが ”いびき”されど ”いびき”です。自覚症状がある ”いびき” (睡眠時無呼吸症候群)によって生じる様々な悪影響があります。

@ 社会生活への悪影響

 良質な睡眠が得られないと、一日中眠気に襲われたり、疲れが抜けない、仕事に身が入らない、日中居眠りをしてしまう、などの原因になってしまいます。自動車を運転する方は要注意で、運転時の眠気による交通事故は大きな社会問題・訴訟問題になる場合があります。また、パイロット・電車や公共バスの運転手の職種の方々は、睡眠時無呼吸症候群が未治療の場合、業務に就けないとされています。

A 体への悪影響

 洗面器に水をはり、深呼吸で息を止めて顔を浸す我慢比べを想像してみて下さい。60秒も頑張る事が出来れば相当です。半数以上の人が苦しくなって途中でギブアップするでしょう。苦しくなって来ると、頭に血がのぼった感じになり、血圧がどんどん上がっていく事が容易に想像出来ると思います。もし深呼吸準備もない、無意識で寝ている時に呼吸が止まっていたら?そう、人によっては苦しくて起きてししまったり(深夜途中覚醒)、最悪血圧が上がり過ぎて、脳出血や突然死の原因になることもあり得ます。特に閉塞型睡眠時無呼吸症候群の患者さんは肥満の方が多く、高血圧・高脂血症・糖尿病などを合併しているケースでは、より心臓病や脳卒中を起こしやすくなります。重症の無呼吸症の患者さんは、10年以内の死亡率が30〜40%と高く、積極的な治療介入が必要とされています。逆に、睡眠時無呼吸症候群の治療をすることによって生活習慣病が改善することもあり、実際に当院でCPAP治療開始後に血圧の治療(降圧剤の服薬)を止められる事が出来た方が数名いらっしゃいます。この様に、睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病には密接な関連があり、ともに適切な検査と治療をしていくことが大切といえます。

■ 睡眠時無呼吸症候群の検査

 睡眠時無呼吸症候群の診断や重症度の判定、治療法の決定のために検査が必要となります。理想的には、心電図・脳波・筋電図などの電極や、眼球・腹部の動きを見るセンサーを身体に付けて眠り、1泊2日で睡眠中の脳波や呼吸の状態を調べる精密検査が必要ですが、無呼吸検査費用以外に、入院時検査としてレントゲンや採血検査が行われたり、また病室が検査用の個室に限定されてしまう事から、個室部屋代なども含めて、おおよそ保険診療で¥55,000〜60,000程度の医療費がかかってしまいます。昨今の経済情勢やコロナ禍で医療機関へ長時間滞在する事への不安、仕事や家庭の都合で忙しい方々が多い事から、当院では自宅での睡眠検査を行っています。検査結果判明後に治療方法を検討する事になりますが、自宅検査結果と自他覚症状が一致しない場合に限り、入院による検査を勧めています。

■ 睡眠時無呼吸症候群の治療

 睡眠時無呼吸症候群の治療には幾つかの方法があります。

@ CPAP(シーパップ)
A 歯科装具(マウスピース)
B 外科的手術
C 減量(ダイエット)

■ CPAP(中等症以上の無呼吸症標準治療)
 CPAPとは「Continuous Positive Airway Pressure」の略語で、持続的に陽圧を気道にかけるという意味になります。圧力を加えた空気を鼻から送り込むことによって、気道の閉塞を取り除く治療法です。寝る時にマスクを当てバンドで固定をする事から、「これでは寝られない」と感じられる方もいますが、慣れれば熟睡感が得られるようになります。日中の眠気の軽減効果があり、死亡率低下のデータも示され、この病気の治療では最も確実で有効な治療法となります。検査結果からCPAPが望ましいと判断された場合、継続して機械による治療が続けられる事が出来るのかを判定する為、当院では数週間〜1ヶ月程度のCPAP無料お試し期間を設けています。試用期間で継続が困難な場合は、別の治療方法を検討します。

■ マウスピース(軽症無呼吸症の治療)

 当院からは、主に市立甲府病院口腔外科へマウスピースの作製を依頼しています。上下の歯形を取り、上部と下部の咬み合わせを3段階で調整して貰います。通常状態から下顎を数mm前に突き出して噛み合わせたマウスピースになりますが、下顎と一緒に舌(べろ)が前に出る状態になる為、奥の隙間が広がり、喉が塞がるのを防ぐことができます。下顎を前に出させる事で顎の痛みが出る場合がある事から、専門的に微調整して貰いますが、元々顎関節症の既往がある場合は、マウスピースによる治療適応外になります。また、残存している歯が少ない、重度の歯周病がある、精神障害でマウスピースの装着が困難など、マウスピースの適用とならない場合があります。

■ 外科的治療

 扁桃腺が大きく肥大してのどを塞いでいる場合は、耳鼻咽喉科で扁桃腺を摘出して貰う手術を依頼する事になります。のどの開口部が狭い方の場合は、軟口蓋(のど仏の軟らかなひだの部分)を切り取る手術依頼を検討します。

■ ダイエット

 急激に体重が増えてから眠気が強くなったり、いびきが指摘され始めたという方も多く、元の体重まで減量が出来れば、無呼吸が改善する事が期待出来ます。


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